うつし世は夢 夜の夢こそまこと 「氷艶2019〜月光りのごとく」第一幕 その1

うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと(江戸川乱歩)

「氷艶」と関係のあるわけではありませんが、7月26日の初日から28日の楽までの3日間のことを思い出すと、江戸川乱歩のこの言葉が思い出されてなりません。一昨年の「破沙羅」の時もそうでしたが、「氷艶」はいつも観客をひととき虚構の世界に連れ去り、そしてその間私たちは「夢こそまこと」の確かな感情を共有する。だから、その夢が終わった時に「氷艶ロス」に陥ってしまうのではないでしょうか。
今回、私は7/26昼公演=初日と7/28夜公演=千穐楽を見てきました。初日の感想は楽の前にアップしましたが、2回観たのを合わせて筋を追ってみたいと思います。

開幕、スケーター達が両手に持った灯りが闇の中に流線を描き、「破沙羅」と同じように「月明りのごとく」も暗闇の「無」から光が生じ、観る者を一気に現実から虚構の世界に誘います。

アリーナ正面(西側)に御簾で囲まれた小部屋が現れ、桐壺更衣(平原綾香)が帝(西岡徳馬)の子を出産する。原作では後のことになりますが、男の子は臣籍降下となり「光源氏」と呼ばれることに。
荒川静香扮する弘徽殿の女御が帝の長男つまり源氏の異父兄にあたる朱雀の君を連れて微笑んで同席していますが、ふと気がつくといつのまにか荒川弘徽殿の顔が冷たい無表情に…演出の宮本亜門さんがスケーター達にも細かい演技を指導したということが最初のこの場面から窺えました。
源氏を我が子朱雀の皇位継承を脅かす存在と見なす弘徽殿。そこに近づき「良い陰陽師がおります」と囁いたのは家臣の長道(波岡一喜)。この「長道」という名前は、藤原道長の名前をひっくり返したものですね?
十二単を脱ぎ捨て、蛇髪姫風味もなくはない黒い衣装で悪の舞を舞う荒川弘徽殿。今回は台詞もこなした荒川さん、正直言って初日は棒読みの時もありましたが、楽には随分と自然な台詞回しになってましたよ。
「破沙羅」での蛇髪姫が大好評だったので荒川さんもすっかり悪役に方向を定めたようで、「破沙羅」の岩長姫的ポジションを半ばヤケ気味?に爆走していました。まあ岩長ちゃんのような複雑な内面性、濃厚なエロティシズムとまでは達してはませんでしたが、長道との悪のコンビ、ブラックでした!それにしてもイナバウワーがあんなに邪悪な印象になるとは…ツイッターでどなたかが「闇バウワー」と命名されたのがRTで回ってきましたが、もうぴったりで。

長道が呼び出した陰陽師(織田信成)がラテン?っぽい音楽で哄笑を撒き散らしながら、桐壺更衣に呪いをかけ始める。初日、私はアリーナ東の席で織田くんの変顔を正面から見てしまい、思わず吹き出してしまったのですが、亜門さんのリクエストは「バットマン」のジョーカーのように、だったそうで、さもありなんw 織田くんの騒々しい摩訶不思議なダンス、おどろおどろしいコメディリリーフっぷりでした。

こうしてあえなく桐壺更衣は取り殺され、大人たちのドロドロを知らない幼い源氏と兄・朱雀は仲良く遊んで育つ。兄は日の皇子、弟は月の君として。
キッズ・スケーターが幕に滑り込み、成長した源氏が入れ替わって登場という形で時間の経過を一瞬で表すのは、私の大好きなイタリア映画のセルジオ・レオーネ監督やベルナルド・ベルトルッチ監督がよく用いた手法ですね。これは後の若紫が紫の上に成長するときにも用いられました。
さて、いよいよ登場した高橋大輔扮する光源氏。宣材写真では烏帽子を被った青年貴族姿でしたが、いざ本舞台では大半の場面で、髪を後ろに垂らした元服前の姿。これはスケートをより滑りやすくという意図もあったのかもしれませんが、福士さん波岡さんら男優さん達と並ぶと、今更ながら大ちゃんの小柄さが際立ち、もしかしたら初年っぽい容姿を生かした衣装設定だったのかも…私の乏しい知識では「牛若丸みたい」という印象でしたが、とにかく大ちゃんのビジュアルを活かしたお衣装ありがとうございます!
衣装担当の堂本さんは、「破沙羅」や「ワンピース」「NARUTO」等の新作歌舞伎の衣装をよく担当されている方ですね。昨年夏の笑也さんのトークイベント(司会は戸部さん)歌舞伎夜話にもいらっしゃっていました。

ここでリンクに演劇的な群衆シーンが設置されます。女物の打掛を被った源氏はお忍びで市場に繰り出す。巧みに人々の間を縫っていく大ちゃんのスケート技術と疾走感を堪能する爽快なシーン。光源氏をこんなやんちゃなトリックスターとして描くとは、想定外で面白いですね。
爆走少年が光源氏とバレるや、娘たちに追っかけ回され、光る君のモテっぷりも印象付けられます。そしてそんな光る君をいさめる頭中将(福士誠治)。原作では源氏の友であり、ライバルでもある頭中将ですが、「月明りのごとく」では、「破沙羅」の義経に対する弁慶のポジションになっていました。
観る前に私が一番懸念していたのは、「破沙羅」の笑也さんのようにアイスホッケーなど氷競技の経験があり縦横なスケーティングが出来そうな俳優がいないのでは?ということでしたが、福士さんと波岡さんのスケート技術にはただただ驚かされました。波岡さんは幸四郎さんも出演されていたアイスホッケーのドラマ「プライド」でスケートの経験はあるとのことでしたが、福士さんは全くのスケート未経験!?よくぞ短い期間でここまで滑れるように…私は福士さんがバッククロスで巧みに滑っているのを確認しましたが、イーグルやトウループまでマスターしたとは!その後の、長道が送り込んだ刺客と戦うシーンでは(「ここは私にお任せを!」って「破沙羅」の弁慶と同じセリフだ)初日の立ち回りの最後でコケてましたが、これは立ち回りの振り付けかな?とも思えなくもなかったです。楽にはコケてなかったので、振り付けではないと分かりましたが。

場面が前後してしまいましたが、源氏がいつまでもやんちゃな少年ではいられなくなる大きなきっかけとなる出会いがその前にありました。桐壺帝のもとに若い藤壺が入内してきたのです。亡き母・桐壺とよく似ているという藤壺に見入る源氏。そして藤壺も…


熱量とブログのページが比例する私なので、当然長編?化してきました。以下、次のページへ!

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