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zoom RSS オペラ映画 「蝶々夫人」

<<   作成日時 : 2009/02/22 00:37   >>

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世界文化社のDVD決定盤「オペラ名作鑑賞」シリーズ『蝶々夫人』を購入。日伊合作の映画と浅利慶太演出のスカラ座の二枚組のうち、まず映画版から鑑賞しました。

『蝶々夫人』(1955年 カルミネ・ガッローネ監督)
これは、かつてイタリアで多く製作された、演技=俳優、歌唱=オペラ歌手の吹き替えで分担された劇場用オペラ映画の一本です。東宝が製作協力して、主演の八千草薫や芸者ダンサーズ役の宝塚歌劇団がローマのチネチッタまで赴いて撮影されたもの。
カルミネ・ガッローネは'56の『トスカ』も監督していて、オペラ映画専門みたいな監督だったのでしょうか。ちなみに『トスカ』では、フランコ・コレッリがカヴァラドッシの演技・歌両方を担当しているので、もちろん私の必須アイテム。
それと、私はガッローネが戦前に監督した"Casta Diva"というヴィンチェンツォ・ベッリーニが主役の大メロドラマのビデオを見たことあるのですが、この話はまた別の機会に。ひとつだけ書いておくと、戦前のイタリア映画は、男優も歌舞伎並み白塗りメークが普通だったのか、最初ベッリーニはオカマなのかと思ってしまいました…。

さて、話を戻して。日伊合作『蝶々夫人』は、以前テレビ放送から録画したらしいビデオを人から借りて見たことあり、それには英語のナレーションが入っていました。今回のDVDを見たら、やはり冒頭で「プロローグ 長崎 1900年」と題する蝶々さんとピンカートンがお座敷で出会う小芝居があって、芸者や舞妓がどーのこーのという日本人にはどうでもいい解説がイタリア語であり。それが終わってから、ようやく前奏曲が始まり、オペラの中身に入る訳ですが…前にビデオで見た時はもう少し面白く感じた覚えがあったのですが、今回見て、映画としての出来がよいとは到底思えない代物でした。
日本側スタッフの協力の下、イタリア側が作ったセットや衣装・メークが人工的でどぎついのは、ローマで製作ではこういう感じだろうと思って見られましたが、映画作品として凡庸としか言いようがない。思えば、『トスカ』も映画としては、こんなところでしたけど。
もうひとつ、すごく気になったのは、蝶々さんの歌唱です。吹き替えているオリエッタ・モスクッチというソプラノは、当時どの程度のポジションだったのでしょうか?高音部が金切り声になってしまっていました。全体的に潰れたような声にも聴こえたのは、サウンドトラックの劣化の所為かもしれませんが。
私は終幕の蝶々さんのアリア「可愛い坊や」を聴くと、よく涙ぐんでしまうのですが、この声では涙の一滴たりとも絞りようがありませんでした。贅沢を言うようですが、例えばテバルディが吹き替えてくれたら…八千草薫の可憐さと相まって、紅涙を絞ったこと間違いなしだったのでは。
ピンカートンの吹き替えのジュゼッペ・カンポラは美声で、よいテノーレ・リリコだと思いました。

八千草薫は大熱演に加えて、さすが宝塚出身ということもあってか、口パクが自然でした。DVDに付いている冊子を読んだら、現在の八千草さんの貴重な証言が載っていて、やはりイタリア語の口パクということで、大変苦労されたそうです。また、「蝶々さんの顔」は、チネチッタのメークさんが、毎日2時間かけて丹念に創り上げたものだったとか。正直、日本人の目から見ると、あまりに人工的で当時の八千草さんの可憐さをいくぶん殺してしまっているように見えるのですが、西洋人から見た東洋人女性の「美」と解釈できそうです。
メーク、衣装に限らず、セットや当時はまだイタリアでは珍しかったカラー撮影も人工美の極致という感じで、これは「お伽の国 ナガサキ」と思えばよいのでしょう。撮影のクロード・ルノワールは確かオーギュスト・ルノワールの息子か孫にあたる人だったと思います。

若い八千草薫に負けず劣らず日本女性の美貌を示してくれたのが、スズキ役の田中路子。女中には美しすぎると言えなくもないですが、長身の美人で、さすがヨーロッパの社交界の花形だっただけのことはあると、大いに納得。ヨーロッパでの生活が長かったはずですが、その立ち居振る舞いは、昔の日本女性そのもので、生まれ育ってから身についたものは環境が変わっても、そうそうは忘れるものではないのだな、とも感服しました。

演出に関して一言。蝶々さんの自害の瞬間は、片側だけ閉めた襖で隠して、その後まだ息のある蝶々さんが坊やの方に這っていくという設定。誇り高い士族の娘にしてはやや未練ありげで、私はあんまり好きじゃないです。「恥に生きるより、名誉に死ぬ」蝶々さんは、潔く命を絶つべき…というのは、私の思い込みでしょうか?最終的に蝶々さんが息を引き取って倒れたのが、坊やが持っていた日の丸と星条旗の上というのは、象徴的なアイデアではあるとは、思いました。


蝶々夫人 MADAMA BUTTERFLY - DVD決定盤オペラ名作鑑賞シリーズ 8 (DVD2枚付きケース入り) プッチーニ作曲
世界文化社
永竹 由幸(ながたけ よしゆき)

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コメント(4件)

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またコメントさせていただきます。
私も全く泣けませんでした。歌が3流だと思いました。カンポーラも有名?な割には、緊張感が感じられません。やっぱり、この種の歌手以外の美男美女が画面に出るオペラ映画に、声だけの出演をするのはプライドの高い歌手にはできないのではと思ってしまいます。
SiMa
2009/03/03 16:37
>SiMaさん、コメントありがとうございます。

なんでも、ピンカートンの演技を担当している、ニコラ・フィラクリディもテノール歌手だそうです。
歌手なのに声を吹き替えられる方も、歌っているのに演技させてもらえない方も、両方とも面白くないだろうと想像してしまうのですが…。

一流歌手の吹き替えというと、『アイーダ』でソフィア・ローレンの吹き替えをしたテバルディぐらいでしょうか<私は未見ですが。
なつ
2009/03/03 22:01
八千草薫さんなので、大きな期待を持って見たのですが、画面のすばらしさと裏腹に、歌には満足できずに、その落差から少し感情的に言い過ぎたと反省しています。でも、蝶々さんは何度も見ていますが、日本人の舞台でも終わって出てくると、みんな目が赤いですよね。私は佐藤ひさらさんには特に泣かされて、嗚咽がでないよう、しばらく目をつぶって堪えたことがあります。
SiMa
2009/03/05 12:27
蝶々さんは、やはり日本人の心の琴線に触れるのでしょうね。
プッチーニがこのオペラを作る際に、当時のイタリア大使夫人(確か元芸者さん)が協力したというエピソードを読んだ覚えがありますが、それで「日本のこころ」がイタリア・オペラに盛り込まれたのかも…なんて想像しています。
私も生の舞台やテレビでの放送でも随分泣かされましたが、テバルディにはCDの音だけでも、泣かされました。
なつ
2009/03/05 19:56

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