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zoom RSS 東京都美術館 「ティツィアーノとヴェネツィア派展」

<<   作成日時 : 2017/02/03 00:35   >>

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日伊国交樹立150周年記念「ティツィアーノとヴェネツィア派展」



イタリア・ルネサンス、ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェリオの日本での単独の展覧会は、なんと今回が初めて、とのこと…日本では、ルネサンスというとフィレンツェかローマ−レオナルド、ミケランジェロ、ラファエッロ、そしてボッティチェッリを思い浮かべる人が多いのでしょう。
以前、ある画集の解説にこんな意味のことが書いてあったのを記憶しています。

フィレンツェで開花したルネサンス=文芸復興を春にたとえるなら、その中心が移ったローマで夏の盛りとなり、もっとも訪れが遅かったヴェネツィアで実りの秋と長い冬を過ごし、ヴェネツィアはイタリアの何処よりも長くルネサンスを享受した。その秋にあたるのがティツィアーノであり、それに続いて冬の時代を支えたのが同じヴェネツィア派のティントレットだった、と。

こんな蘊蓄たれることが出来るのも、私の大学の専攻が西洋美術史であり、卒論はティツィアーノの「聖母被昇天」だったからです…遠い遠い過去のことですが(笑)
私がなぜティツィアーノを卒論に選んだかも語りたいことろですが、また長くなってしまいそうなので、まずは2017年2月2日に東京都美術館で鑑賞した「ティツィアーノとヴェネツィア派展」のことを。

展示作品のボリュームという点では昨年の「カラヴァッジョ展」ほどではないにせよ、良質の作品を選んできていて、ティツィアーノとヴェネツィア派の紹介として90点以上をつけられる内容だったと思います。何よりもティツァーノの数ある傑作の中でもベスト10に入るであろう「フローラ」と「ダナエ」この2点を日本に持ってこられただけでも、成功が約束されているとも。ティツィアーノ以外、いわゆるヴェネツィア派の作品群もかなりのレベルの作品が揃い、私は非常に満足しました。欲を言えば、作品数が極端に少ないジョルジョーネは仕方ないとしても、ベッリーニ一族の聖母子像などティツィアーノの師匠筋の作品はもう少し見たかったですね。

さて今回の目玉作品の一枚、ウフィツィ美術館所蔵の「フローラ」は、フィレンツェ「でに、それから一度日本でも見た覚えがあります。サイズがあまり大きくない油絵で海外に持って行きやすいのでしょうが、とにかくこの美人画を日本に居ながらにして見られるのは有難いこと。ティツィアーノ好みと思われる完璧な卵形の顔、豊かな胸元の肌のきめ細やかさをスフマートを駆使しての表現は必見です。

もう一枚の目玉作品「ダナエ」は、私も今回が全くの初見。ティツィアーノ得意のギリシャ神話を題材とした裸婦像(カトリックの王侯貴族が「神話」を隠れ蓑にして堂々と飾ることが出来た)で、同じ構図のダナエがプラド美術館など何点かありますが、今回きたナポリのが一番若書きのようです。とはいっても、青年期に書かれた「フローラ」より20年余りが経過し、より円熟した女性美の表象となっています。
素晴らしいのは、初々しく柔軟な裸体描写でありながら、シーツに横たわった重さというか肉体の実感をもしっかりと表現していること。そして上品で愛らしい顔立ちながらダナエの表情に、黄金の雨となって忍んできたゼウスへの憧れーもっとはっきり書くと、欲望をしっかり描き込んでいるのが、もうさすがとしか。
しかしいつどの作品を見ても、ティツィアーノの裸婦像には微塵も不健康や卑しさは感じられません。もっとずっと時代が下ってのルノワール同様、ティツィアーノは健康な女性のエロティシズムに絶対的な美を見出していたからだと思います。
ちなみに「ダナエ」の隣のティントレットの「レダ」もゼウスが美女のもとに変身して忍んでいく似た題材ですが、こちらはいわゆるエロい絵なんですよね。これはもう画家の資質です。決して絵の優劣ではないですよ。「レダ」も文句ない名画です。

さらに嬉しかった展示は、これまた未見だった「教皇パウルスV世の肖像」。老年期に差し掛かったティツィアーノの筆致の円熟の一枚です。絵筆だけで、教皇の老獪な人間性を伝えてしまう鋭い観察眼、衣装やビロード張りの繊維の質感をほとんど一刷けじゃないかと思えるほどのシンプルな筆致で描き切った技術。油絵の表現の極致なのではないかと思います。

画像


そしてエルミタージュ蔵の涙を溜めた着衣像(私が学生の時に来日)、ピッティ宮殿の激情的な裸体像に続いて、私にとっては3枚目のナポリの「悔悛するマグダラのマリア」。これまた同じ構図が何枚も描かれた人気作(聖書を題材にした裸婦像)で、ピッティの肉体表現とエルミタージュの感情表現の中間とも良いところどりとも言えますね。フローラもダナエも同じですが、褐色の髪の毛の表現の素晴らしさも見どころです。

以上、ティツィアーノの大作ばかりになってしまいましたが、ジョヴァンニ・ベッリーニの「聖母子」、上述のティントレット、ヴェロネーゼ、ベルナルディーノ・リチーニオの肖像画など見どころは沢山でした。
中には明らかに修復されてなくて燻んだ色合いになってしまった絵画もあり、「ダナエ」のようにまるで昨日筆を置いたかのように修復・洗浄された作品との格差を実感させられましたが、そういう歴史に危うく埋もれかねない作品を日本で見ることが出来るのも、また貴重な体験でしょう。
私は最低でも、あともう1回は足を運ぶつもりです!


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ヴェネツィア派;フィレンツェやローマのイタリアルネサンスとの違い
ティツィアーノとヴェネツィア派Titianand the Renaissance in Venice ベッリーニ工房を中心に展開するヴェネツィア・ルネサンス初期とティツィアーノの円熟期とヴェネツィア派の画家たち、及びティツィアーノ以後のヴェネツィア派の巨匠たちの絵画を紹介する美術展が東京都美術展で開催されていましたので鑑賞してきました。(When you click the"Translate to English" in the lower right, you can read this a... ...続きを見る
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2017/03/25 13:13

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