紫のゆかりの物語「氷艶2019〜月光りのごとく」第一幕 その2

新しい女御藤壺に桐壺帝は亡き桐壺更衣の面影を求め、息子の光源氏は義母藤壺に一目で恋に落ちてしまった。禁断の恋は、激しい恋情と共に、天衣無縫だった少年・源氏を次第に内省に向かわせていきます。

「月光りのごとく」の光源氏は、市井に飛び出していきますが、オリジナルの根幹である宮中の雅びな催事もきちんと描かれます。
朱雀の君の皇位継承を固めたい長道の提案で、朱雀と源氏の歌くらべが帝の御前で執り行われ、藤壺が優劣を判定することになった。
前作で、荒川女神稲生のエッジの軌跡で「破沙羅」の文字を描くというプロジェクションマッピングがありましたが、今回は朱雀の君と光る君のエッジで各々が詠んだ和歌を描くという趣向。これはスケーティング巧者でないとこなせませんね。藤壺が「わたくしにはどちらが、と決めることは出来ません」との言葉の通り、朱雀ランビエール、源氏大輔甲乙つけがたいエッジ捌きでした。え?倒れる! ?と一瞬ひやっとした程斜めってた大輔源氏のディープエッジ!
ランビエールが朱雀帝にキャスティングされた時はそれはもう仰天しましたが、例えばオペラの名盤・舞台の配役を例に取るとアフリカ系アメリカ人レオンタイン・プライスの蝶々さん(真央ちゃん「蝶々夫人」の音源は彼女)、スウェーデン人のブリギッテ・ニルソンが史上最高のトゥーランドット歌い etc. etc. 国籍人種に拘わらないのは前世紀から常識。そもそもフィギュアスケートだって、トスカは白人以外やるな!カルメンはジプシー以外やるな!とか言われたらどうします?
長々書きましたが、ランビエールの朱雀帝、リプニツカヤの紫の上は、キャスティング考えた人がまず偉いですが、実際に見たら大成功の起用でした。
弘徽殿の女御が息子の即位の為に命を賭けて悪事にまで手を染めるのも、朱雀の美青年っぷりを目の当たりにすると俄然説得力があります。長道は単なる道具。おそらく女性としての弘徽殿に惹かれてもいる長道に接吻を与えるのは、長道を操る為だけなんですよね…考えてみると長道も哀れ…とは見ている間は全然感じませんでしたがw
福士さんも素晴らしかったけれど、長道役の波岡さんの悪役っぷりと巧みなスケートも強烈な印象でした。初日に第1部終わった時点で「長道が準主役だ!」と思いましたもの。

長道の計略で、狩に誘いだされる。プロジェクションマッピングでウサギなど動物が映し出され、それを弓矢で狩る様をまたもや大輔源氏と朱雀ランビエールがスケートで競います。源氏が滑りながらまるで相撲の土俵入りみたいに弓をくるくる回したり、ここも二人のスケート技術を活かした躍動的なシーン。
しかし長道の放った刺客が源氏を襲い、ここで最初の立ち回り。頭の中将上が「この場は私におまかせを」、源氏「わかった!」と「破沙羅」の義経と弁慶主従が再現されます。前のページで書いたように、初日は転倒あったものの福士頭の中将の「この前まで初心者だった!?」のが信じられないスケートによるアクションが堪能できました。

刺客に傷を負わされた源氏はその足で藤壺女御の寝所へ忍んでいく…
まもなくBS日テレの放送でどこかはっきりしますが、私のガラスのメモリーに残っていく源氏が藤壺の後をひたすらついていく場面はここでしたっけ、これより前でしたっけ…。「なぜ後をついて来るのです?」という藤壺が十二単で、すーっと移動していく平原さんがこれまた初心者とは思えないスムーズなスケーティングを披露。平原さん稽古中は靴が合わずに大変な苦労をされたというのに、本番ではそんな気配をつゆほども見せない優雅さ!しかもスケート履いたまま歌うって大変なことだと思います。2公演で平原さんのソロは計4回聴きましたが、クリスタルのような美声による安定した歌唱はほんとうに素晴らしかった。

さて。大輔源氏の台詞による口説きが始まります…前のページで書き漏らしていましたが、大ちゃんの最初の台詞は、市場での頭の中将とのやり取りが最初。初日、荒川弘徽殿の台詞があったくらいだから、源氏も台詞あるよな…と心の準備はできていたので、大ちゃんが最初に台詞言った時は「キタキタキタ−」でした。それでも「破沙羅」の時の「静御前!」みたいに「録音かもしれない」という疑いを捨てきれなかったファンの風上にも置けない私でした…でも最初の立ち回りの後の台詞で息が切れていたので、「生台詞だ!」とようやく確信に至りました(汗)
そしてあの「惹かれてしまった…」ですよ。藤壺への抑えきれない思想いの発露、初日もけして棒ではなかったですが、2日後の楽にはより自然になっていて、聴いているこちらも全然照れずに受け止めることが出来ました。まあね大ちゃんの台詞がけっこういけるのは、2007年のオロナミンCの「外回ってきました!」の頃から知ってましたがw
結局藤壺も源氏を受け入れ(最初会った時から、彼女もまた源氏に惹かれていたことは明らか)、御簾の中での典雅なラブシーンに…
暗転した照明が明るくなった時の源氏のしどけない様子は、ああこれが原作で度々描かれた平安朝の「後朝(きぬぎぬ)」の恋人同士か…と。
またここで桐壺帝が姿を現し、若い二人の密会を密かに見守っていました。なんか桐壺帝が姿を現さなかった回もあるようなことをツイッターで見かけたのですが…私も初日は確かに帝の姿を確認しましたが、楽には記憶がありません。このあたり初日と楽以外はどうだったのでしょう?
帝が源氏と藤壺の不義も、やがて生まれる若宮(後の冷泉帝)が自分の子供でないことは実は知っていたのではないか、というのは原作でも匂わされていましたね。後年(「月光りのごとく」ではないことにされる未来)、妻の一人となった女三宮が若い柏木との間に産んだ薫を自分の子として受け入れざるを得なかった源氏が、実は父・桐壺帝もすべてを知っていたのではないかと思い至るという…。

密会の後、藤壺は源氏に「もう二度と会いません」と言い渡す。孤独にうちひしがれた源氏の前に、一人ぼっちで泣いている少女が現れる。「お前も一人なのか?」と源氏は少女の手を取り、この少女が成長して紫の上となります。
桐壺帝が藤壺を桐壺の身代わりにしたように、源氏もまた藤壺に拒絶されたさびしさから少女をその身代わりとします(原作では、紫の上は藤壺の姪にあたるので、似ているのも自然なこと)。でも、「依代(よりしろ)」として出発した紫の上(しかも少女時代から、薄々自分が誰かの身代わりではないかと気付いている)は、自らの魅力と愛情で、やがて彼女自身の力で源氏の生涯の伴侶となります。
「月光りのごとく」ではその辺りの機微を文章ではなく、ビジュアルとスケートで巧みに表現しいていて、脚本と演出、そして演者の力量を実感させられました。
蝶々を追っていた少女の紫の上が幕に引っ込むと、すぐに成長した紫の上としてリプニツカヤが登場するという時間の経過の表現は、源氏の成長の時と同じ手法でした。
ここでぶっちゃけたことを書くと、前回「破沙羅」で美しい木花佐久夜姫を演じた浅田舞が今回は参加しないこがやや懸案事項でした。それをリプニツカヤの起用で見事に「美人枠」を埋めるとは、考えたなぁと思います。ランビエール同様、リプニツカヤも物語世界の中に全く違和感なく溶け込み(宣伝写真では装着していた黒髪のカツラは使用せず、地毛で演じていました)、美しい大人の女性と愛らしい少女が同居した魅力をふりまいていました。
そんな紫の上を朱雀が見染めるが、もちろん紫は拒否…でもステファン朱雀とリプ紫の上のデュエットは息が合って美しいんですよねえ。実は紫の上も心のどこかで朱雀に惹かれていたのだと思えてならないのです。だからそれを見咎めた源氏は拗ねてしまったのでしょう。そんな源氏を紫の上は宥め、仲直りした二人は愛らしいデュエットを滑ります。このくだりは音楽と相まって、なんだか1970年代の洋画の青春映画を見ているような気分になった昭和の少女wでございます。

一方、藤壺は実は源氏との間の子である若宮を出産、帝は退位して長男・朱雀に帝位を譲り、新しい皇太子には若宮を指名した後に病に倒れ崩御します。ここで坊さんが現れ読経始めますが、坊さん  on iceって間違いなく前代未聞でしたね。
新帝を盾にして、弘徽殿と道長は専横を極め始め、長道は「帝が紫の上をご所望じゃ」と紫の上を取り上げようとして、源氏に剣を抜かせる。帝に刃向かった反乱者とされた源氏は船を漕ぎ出し、紫の上を連れて逃亡を図ります。別の船でそれを追う長道。前作「破沙羅」の海上決戦で見せたチームラボのプロジェクションマッピングによる美しい海が再び登場、今回はそこに船を浮かべました。
源氏は「紫の上ー!」という叫びを残し(楽にはエコーがかかっていました)海に転落、紫の上は長道の手に落ちてしまう…。

ここでやっと第1部終了、やっと半分 まで書いた私はこれよりフレンズオンアイス 2019初日に行って参ります!
85E3F86D-D2AE-460E-B224-62E1654CA6F0.jpeg

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック