月刊文藝春秋 市川雷蔵夫人の手記

亡き父が毎月購読していた月刊「文藝春秋」。私は幼い頃から活字中毒だったので、家の中に雑誌が転がっていればぱらぱらでも目を通していましたが、文春で一番記憶に残っているのは、カラー口絵付きの辻邦夫『十二の肖像画による十二の物語』かな<これは単行本になったのも買いました。ティツィアーノの自画像を題材に取った、老画家と死神のやり取りは、辻版「ベニスに死す」といえる傑作短編!

とはいえ、私は「おやじ雑誌」と定義付けていたので、まさか自ら書店で求める日がくるとは、思っていませんでした。
なんで買ったか?それは市川雷蔵未亡人・大田雅子さんの手記『夫・市川雷蔵へ 四十年目の恋文』が今月号(2009年5月号)に掲載されていると知ったからです。
私は雷蔵ファン歴せいぜい2年のニワカですが、今年が没後40年と聞き、それだけの歳月が流れても、相変わらず「映画スター」であり続ける雷蔵の偉大さをあらためて実感します。
市川雷蔵(本名・大田吉哉)は1969年7月17日に37才で癌でこの世を去り、後にはまだ28才だった雅子夫人と3人の幼い子供が残されました。夫人は今まで
主人が築いた世界に私が踏み込んではいけない
市川雷蔵はファンの方にはとって「万人の恋人」ですから、私が前へ出るべきではない

という考えから、テレビや雑誌から亡き夫の思い出を語る依頼を受けても断ってきたとのこと。しかし、没後40年を迎えるにあたり、生前の父の記憶がほとんど残っていないお子さんたちに、父親がどういう人だったのか話しておきたい、とい思いから、この手記を書く決意をされたそうです。

たとえ、口述筆記だったとしても、一読して雅子夫人の気品と知性、そして40年もの長い年月夫への思慕を抱き続けて生きてこられたことが分かる、これは名文です。雷蔵ファンの方で、まだ読んでいない方がいらっしゃいましたら、ぜひお読みすることをお勧めします。
雷蔵との出会いから死別までが淡々と語られますが、まず夫人が如何に結婚生活の隅々まで追憶として刻み込んでいるか、ということに驚きを覚えます。それほどに幸せな日々であり、強固な夫婦の絆であり、それだからこそ、残されたお子さんたちを立派に育て上げられ、今静かに回顧する日を迎えることが出来たのでしょう。

雷蔵さんといえば、スクリーンでのカリスマ・色気と、私生活でのどう見ても固いサラリーマンか公務員!?というギャップの大きさがありましたが、やはり家庭では後者のイメージどおりだったようです。雷蔵さんのモットーは
朝と夜の食事は家族揃って食べること

で、結婚後は撮影所に入るのが朝8時半~帰宅午後6時半という、ほんとうにお勤めしている人と同じような規則正しい生活で、お子さんともよく遊んだよいお父さんだったことが窺われます。
その他、とてもお洒落で上野のアメ横で海外ブランドを揃えていたこととか、奥様にぜひ見てほしいと言った映画が『陸軍中野学校』とか、貴重なエピソード満載です。
『陸軍中野学校』は、一種の群像劇だから、雷蔵さんは自分の「スター映画」じゃなくて気に入ってなかった、なんて説を読んだことありますが、それほんとの話じゃなかったんだったんですね。子どもの世話は自分がするから、劇場に見に行ってくれと奥様に頼んだほどだったのだから。
久しぶりに私もこの作品レンタルで見よう。それより、DVD買っちゃおうかしら~下のアフェリエイトのジャケット写真見ると、やっぱり映画に出てる時の雷蔵さんは、現代劇でも美しい!話が逸れますが、『陸軍中野学校』は現在ではテレビじゃ放送できない?みたいですね。まあ、『炎上』や『破戒』もテレビ放送不可能だろうから、ほんとうに見たい人だけ見ればよいのでしょう。

直腸ガンを発病してからの闘病生活そして死までは、やはり読むとつらいです。何よりも、それを語った奥様の心中も、察するにあまりありますが…。
手記の最後は
楽しく幸せで夢のような結婚生活だった

と締めくくられ、ああこの奥様は、若くして夫に死に別れるという想像を絶する不幸に逢われても、それでも幸せな女性だったのだと、清々しい気持ちで読み終えることができました。
私のような一介の「ファン」は、雷蔵さんの遺した映画を一本でも多く、一回でも多く見ること、それがファンとしての最大の勤めですね。


陸軍中野学校 [DVD]
角川エンタテインメント
2007-12-21

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これを最初に見てくだ ...
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この記事へのコメント

セバスチャン
2009年04月21日 02:38
ご紹介いただきありがとうございました。早速呼んでみます。
私も「陸軍中野学校」大好きです。淡々と母を捨てる所があまりにも非人間的で、かえってリアルだったのが怖かったし、恋人のケースもしかり。

新しい、そして本当の雷蔵さんの素顔、奥様には語っていただいて感謝、ですね。
なつ
2009年04月21日 21:42
>セバスチャンさん
>淡々と母を捨てる所があまりにも非人間的で、かえってリアルだったのが怖かった
この映画をレンタルで見てから、もう7,8年くらいたつでしょうか。
母との別れのシーンすっかり忘れてしまってました。恋人の小川真由美の運命は、さすがに覚えていますが…
二枚目でああいう演技が出来るのは、雷蔵しかいないのだろうなあ、とあらためて思います。

以前、You Tubeに雷蔵さんの結婚式&披露宴のニュースフィルムが上がっていましたが、今回の奥様の文章、あの花嫁姿の楚々とした清楚なイメージそのままです。
幾山河
2009年04月21日 23:55
こんばんわ。
市川雷蔵さんの奥様の手記が発表されていたのですね。ついに出たのですね。ご紹介ありがとうごさいました。
私も早速読んでみたいと思いますが、なつさんの記事を読むだけでも感動ものです。
私も、雷蔵さんの作品の中でも「陸軍中野学校」シリーズが好きです。昔二番館や三番館で上映されていたのを見ていましたが、ニヒルな虚無感が胸を打ちました。見終わったあとも雷蔵さんのあの声が耳元に残っているようでした。それは最近スカパーで見ることができるようになってからも同じですね。この作品は雷蔵さんもお好きだったんですね。雷蔵さんの腕も凄いが、監督さんの腕も凄い。昭和十年代の暗い雰囲気がびんびん伝わってくるようです。女優さんや共演者の方々も上手い、見応えのある白黒の映画です。


ごみつ
2009年04月21日 23:59
今晩は!

お~~!これは知りませんでした。
早速私も購入して呼んでみます。

その後、奥様やお子さん達は、どんな風に暮らしていたのか気になっていました。

素顔の雷蔵さんは、本当に普通のサラリーマンか公務員みたいなんですよね。ところが、ひとたびカメラの前に立つと、あんなにもオーラを発散させる事が出来るなんて、本当に凄い役者さんですよね。

私、公務員風メガネルックの雷蔵さんも、かなり好きだったりします。
あべ
2009年04月22日 20:01
雷様歴長いのに・・ちっとも知りませんでした。
明日本屋にダッシュします。ありがとうございます。

陸軍中野学校は、ケーブルテレビなどではわりとやっていますが、「破戒」はぜったいやらないですね。
ぜひ学校で見せるべきだと思うんですけどね。

奥様、写真で見た印象はなんともおっとりした可愛らしい感じの方でしたが、お一人で3人も子育てはご苦労だったでしょうね・・。
なつ
2009年04月22日 22:03
>幾山河さん
>ごみつさん
>あべさん
コメントありがとうございます。
なんだか私が文春の宣伝しているみたいなんですが、それだけ雷蔵さんの奥様の手記が待ち望まれていたものだということですよね!

「陸軍中野学校」はスカパーなどでは、けっこう放送されているのですね。情報ありがとうございます。BSでは難しいのかでしょうか…狂四郎シリーズでも、NHK BSでは無理なのがあるらしいですし…。

>雷蔵さんの腕も凄いが、監督さんの腕も凄い。
増村保造監督ですね。この監督の作品も今後チェックしなければ、と思っています。それと、「陸軍中野学校」小川真由美もよかったですねえ。

>ひとたびカメラの前に立つと、あんなにもオーラを発散させる事が出来る
雷蔵さんはメークがとても巧みだったという話もありますが、それだけでなく、オンオフの切り替えが完璧な「プロの役者」だったのでしょうね。

>「破戒」はぜったいやらないですね。
私も実はまだ見ていないのですが…次はぜひこれ!と思っています。「そのこと」が歴史上なかったかのような扱いにするのはどうかと思いますよね。
ハゲコウ
2009年05月04日 23:06
こんばんは。
初めて書き込みします。文藝春秋の5月号に奥様の手記が載っている事を知り、是非とも読みたいとおもいました。ご紹介ありがとうございます。私もファンになって約2年になります。きっかけは眠狂四郎です。私は「破壊」は図書館で視聴しました。もしかしたらお近くの図書館にあるかもしれません。参考までにと思いましたが調査済みだったらごめんなさい。
ハゲコウ
2009年05月04日 23:27
恥ずかしながら漢字を間違いました。「破壊」ではなく「破戒」ですね。
なつ
2009年05月05日 19:47
>ハゲコウさん
ダブっている投稿がありましたので、一件削除させて頂きました。ご了承下さい。当Blogのコメント欄は管理人しか編集・削除が出来ず、訪問者の皆様にご迷惑をかけており申し訳ありません。

私もきっかけは「眠狂四郎」です。一昨年のNHK BS2の特集放送でファンになり、そのすぐ後に池袋文芸座で開催された雷蔵特集上映に通い詰めました!

私は普段図書館は利用しないのですが、機会があったら行ってみます。アドヴァイスありがとうございました。
Yoshi
2019年04月17日 09:59
幼い頃 母が大ファンだった雷蔵さんの映画につれられてゆきました。子供心になんと美しい人だと驚きました。アメリカで40年余り、暮らしておりますが、ハリウッドの映画俳優と比べても 勝る美貌と演技のタレントをお持ちです。雷蔵さんの完璧主義には 恐れ入ります。いつまでも雷蔵さんは私の尊敬と憧れの男優です。ありがとう。
2019年06月01日 16:57
Yoshiさんレスが遅くなり大変失礼いたしました。
私は残念ながらリアルタイムでの雷蔵さんの記憶がないんです。子どもにはちと難しい内容でしたが、大河ドラマ「樅の木は残った」を見た覚えはあるのですが、あの平幹二朗が演じた原田甲斐の役は病に倒れなければもともと雷蔵さんがキャスティングされていた、という説もあると知りました。もし雷蔵さんで実現していたら、私もリアルタイムで見ることが出来たのでしょう…

>アメリカで40年余り、暮らしておりますが、ハリウッドの映画俳優と比べても 勝る美貌と演技のタレントをお持ちです。
なんて素敵な雷蔵讃!
今でも私はよくDVDなどで雷蔵主演の映画を見ています。先日は京マチ子さん追悼でコメディの「濡れ髪牡丹」を視聴しました。
そして「炎上」の雷蔵さんは、世界映画史上最高の演技だったと信じています。

コメントありがとうございました。雷蔵さんのこと語れてうれしいです。
Etsuko
2019年06月27日 06:31
奥様の手記は今どこかで読むことが可能ですか? 私もアメリカ在住です。オンラインのどこかで読むことができればいいのですが。
2019年07月28日 14:41

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