光文社文庫『ひとにぎりの異形』よりマッシモ・スマレ『鉄と火から』を読む

当Blogで度々取り上げさせて頂いている、トリノ在住の作家・翻訳家のマッシモ・スマレさんがお書きになった短編小説が、光文社文庫の「異形コレクション」シリーズ最新巻『ひとにぎりの異形』に掲載されています。80編ほどのショート・ショートが編まれていますが、海外からの参加はマッシモさんお一人。本人がイタリア語で書いたものを、自ら日本語に訳したものです。

『鉄と火から』(原題"Dal ferro e dal fuoco")

白状すると、いかに日本語堪能なマッシモさんといえ、文学作品としての出来は如何か、日本語がこなれているか、内心心配だったのですが、一読してそれは杞憂と分りました。
4頁の短い作品ですが、「日本語で書かれた短編小説」として充分読み応えがありました。これ、友人だからってよいしょしているのではありませんよ。難をいえば、何箇所かに「硬い」言い回しが見受けられたところ。これは、作者が日本に定住されていないことからくるものではないかと思うのですが…。

この作品の特徴は-いささかネタバレになってしまいますが-「鉄と火から出来た」と称する非生物の「私」が、地中から一人称で語っていることです。しかも、「私」は明らかに「女性」に属しているらしい。「彼女」はいにしえのイタリアの騎士が戦場で振るった剣なのですが、イタリア語で「剣」はspada、女性名詞なので、「女性」に属するのでしょう。

私がこの短編を読み終わって、まず浮かんだ言葉はcrudele「残酷な、むごい」という形容詞でした。それもある種耽美的な香りのする…。「武器」「戦争」に象徴される人間の暴力性について考えさせられ、そして「彼女」には錆付いたまま地中で眠り続けてもらえたら、どんなユートピアがこの世に実現するか、と夢想させられました。

出来れば、この短編をイタリア語でも読んでみたいです。

ひとにぎりの異形 異形コレクション (光文社文庫 い 31-26 異形コレクション 39)
光文社

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この記事へのコメント

  • Massimo

    『鉄と火から』の紹介、どうもありがとうございました。m(_ _)m
    これからも頑張りますよ!
    仰ったとおり、短編の主人公である剣は、女性ですね。つまり、生と死、恋と嫉妬を象徴する話だとも言えるでしょう。
    2007年12月21日 11:37
  • なつ

    >Massimoさん
    イタリア語の原稿ありがとうございました。
    今、単語を引いているところなので、引き終わったら、一気に読ませていただきますね。
    今後の作品にも期待していますよ!

    日本人の私の感覚では、la spada「剣」は男性的な道具に思えるので、なんで女性名詞なんだろう?なんですが…。
    逆にil fiore「花」が男性名詞だったり…面白いですね。
    2007年12月21日 23:46

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