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zoom RSS キャサリン・ヘップバーン 「フィラデルフィア物語」

<<   作成日時 : 2017/04/29 23:55   >>

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『フィラデルフィア物語』 "The Philadelphia Story"(1940年The Philadelphia Story" ジョージ・キューカー監督)

おそらくアメリカ映画史上もっとも偉大な女優であるキャサリン・ヘップバーン(1907年 - 2003年)の若き日の代表作をDVDで鑑賞。以前1度見たことがあり、おおまかなプロットはもちろん覚えていますが、細部はかなり忘れていたので、新鮮な気持ちで見ることができたと思います。たぶんこのブログのどこかに前見た時の感想文があるかと思いますが、それは参考にしないで新たに書いてみます。

それにしても1940年!77前の映画って太平洋戦争始まる前ですよ。物語の根底に男尊女卑が若干感じられ、道徳観も現在とはかけ離れている−そして何よりも「階級制度」が厳然と存在する時代なのが今から見ると違和感はありますが、しかしうなるほど上手い脚本、女性映画の名匠キューカー監督の洗練された演出、スター俳優たちと名脇役たちの演技により、今もって色あせることのないスクリューボール・コメディの名作です。

もともと主演のキャサリン(ケート)・ヘップバーンにあてて書かれた戯曲が原作とのことで、まさにこの映画は血の通ったディーヴァ、ケートに奉仕した映画といってよいでしょう。
ケート扮するトレイシー・ロードは、フィラデルフィアの富豪の令嬢。美貌、知性、富とすべてに恵まれ自他ともに完璧な女性としてみなされるトレイシーには、しかし離婚歴があった。熱烈な恋愛の末に結婚したヨットの設計士デクスター(ケーリー・グラント)とは、超即効の離婚だった様子(もしかして一日で!?)。デクスターの飲酒癖などが、完全主義者のトレイシーには我慢ならなかったのだという。
今のトレイシーは二度目の結婚を控えているが、今度の相手は坊ちゃんだったデクスターと違い、貧しい生まれから努力して富裕層に這い上がった真面目なジョージ。いよいよ明日が結婚式という日に、前夫デクスターが、南米にいる兄の友人と称するコナー(ジェームズ・スチュアート)とリズのカップルを連れてロード邸に乗り込んできて…物語はこれからたった一日の出来事です。
実は作家志望のコナーとカメラマンのリズは、金のため仕方なくとはいえ、マスコミに媚びを売らないトレイシーの結婚式の取材に潜入してきたゴシップ記者。デクスターはそれを百も承知なばかりか、そのことをあっさりとトレイシーに告げる。若い女のもとに走って家を出ているトレイシーの父親のゴシップ記事を握りつぶす代わりに、コナーとリズの取材を受け入れるように、というのだ。怒りを押し殺し、コナーとリズの前で何事もないかのようにふるまうトレイシーだったが…。

さあ、それからが脚本家の腕の見せ所で、一日の間にめまぐるしく様々ことが起こりますが、それは完璧な女性=「女神 godess」と呼ばれるトレイシーの「女神像」が揺らいでいく過程でもあります。
デクスターに他人の欠点を受け入れられない可愛くない女と辛辣に指摘され、トレイシーは唇を噛みしめて涙をこらえる…普段は気丈な女性が傷ついてぐっと涙をこらえる、これがケートの十八番なんですね。ヴァカンス先でパートナー不在のさびしさを味わう『旅情』のOL、夫とその若い愛人のキスを見せつけられ、屈辱に耐える『冬のライオン』の王妃エレオノールetc.…
追い打ちをかけるように、突然家に戻ってきてあっさりと母と和解した父親までがトレイシーの人格を非難する。いわく若い愛人のもとに走ったのは、自分の老いを自覚したから。娘であるトレイシーがもっとやさしく可愛い娘なら若い愛人のもとになど走らなかった、と…
えーちょっと随分と自分に都合良い理屈じゃありませんかお父さん。自分の不倫を娘の所為にするなんて、いくらなんでもアクロバット理論。
まったく元夫といい父親といい、いくら普段は気位が高いトレイシーとはいえ、面と向かって人格批判するって、随分ですよね…。特にデクスターのケーリー・グラントの表情が残酷で、この男、自分を追い出した元妻に復讐にきたのか、という感じ…もちろんそれだけではないのですが。



トレイシーは婚約者ジョージに「崇拝じゃなくて、愛してほしい」と訴えるが、ジョージにはトレイシーの心の叫びが理解出来ない。すっかり心乱れたトレイシーは、コナーと語るうちに、彼の若者らしい率直さに惹かれていく。
結婚前夜のパーティーでやけ気味に酒を煽り酔っ払ったトレイシーが知性とプライドの鎧をかなぐり捨てた姿に、コナーは「内面の炎」を感じ取り、二人の間に衝動的な恋の炎が燃え上がる…
酔っ払ってプールに飛び込んだトレイシーを介抱するコナーを目撃したデクスターとジョージは?
トレイシーが女神ではなく生身の女であることを知った時の3人の男の反応は、ジョージ=幻滅して怒る、デクスター=静観、コナー=一緒に酔っ払う、というところ。
こうして結婚式直前にジョージと別れたトレイシー、しかし招待客はもう集まっている、さあどうする!?という時に、デクスターは自分で解決しろと突き放す。一方、コナーは「トレイシー僕と結婚してくれ!」と唐突なプロポーズ!しかも元からの恋人のリズの目の前で!
トレイシーが「うれしいけれど、あなたと結婚出来ない。リズに悪いもの」と断ると、リズがほっとした顔になるけれど、リズよそれでよいのか?自分がセカンド・ベストでしかないことがはっきりしたのに、なんでそんな単純に喜べるんだか。
トレイシーはというと、「今度こそ舵をうまく取るわ!」と超唐突にデクスターとよりを戻す宣言をして、急遽、トレイシーとデクスターの2度目の結婚式に…デクスターがすごくうれしそうな顔になったから、これが狙いだったんだろうけど、ほ・ん・と・う・にそれでいいんですかー?どう見ても、恋に落ちたのはトレイシーとコナーなんだけど。最初の結婚の時のハネムーンのヨットの名前がTrue loveだったという伏線は張ってあったし、トレイシーの「舵を取る」というのはそれに引っかけたもの。紆余曲折の末、デクスターに「真実の愛」を見出したというのが、トレイシーが自分で見つけた答えだったんだから、それで無理矢理納得するしかないハッピーエンドでした(苦笑)

とにかくこの映画は、輝ける若き日のキャサリン・ヘップバーンにひたすら奉仕した作品であり、往年のハリウッドのスクリューボール・コメディの洗練された魅力の神髄であることは間違いありません。当時、「不美人」扱いされたことまであったケートだそうですが、当時の美人女優のベターッとした美貌とは違いますが、やっぱり美しい人ですよ。素晴らしいスタイル(ウエスト45cmだったらしい)と整った顔立ちに加えて「内面の輝き」、さらに当時のハリウッドの「女優ライト」の活躍にも感心させられました。これは皮肉ではなく、女優の美しさに奉仕する、ハリウッドが「夢の工場」だった時代の、古き佳き献身だと思います。

最後になってしましましたが、舞台劇を映画に置き換えることに見事に成功した、ジョージ・キュージャー監督の手腕なくしては、この映画の成功はあり得なかったであろう事を付け加えておきます。ラストシーンの落ちの小粋なこと、そしてケートとケーリー・グラントのsuprised lookは、「スターがスターであった時代」の最高の輝きだと思います。



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