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zoom RSS クリント・イーストウッド監督 「ハドソン川の奇跡」

<<   作成日時 : 2017/03/04 23:01   >>

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クリント・イーストウッド監督 『ハドソン川の奇跡』 "Sully"(クリント・イーストウッド監督 2017年)
(上記公式サイトにアクセスすると、トレイラーの音声が流れますので、ご注意下さい。)

もうDVD、ブルーレイも発売になっていますが、私は2月に映画館でやっと見ました。
既に見ている何人かの知人が絶賛していましたが、果たして期待を裏切らない力作でした。イーストウッド監督の創作力は80代半ばにして、衰えるどころかますます進化・深化しています!体力・c威力ともにまさに(よい意味で)怪物級です。

「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる航空事故は、2009年に実際に起こった「USエアウェイズ1549便不時着水事故」の別称であり、で未だ記憶に新しい航空事故であり、しかも映画の登場人物は実名で登場しています。原題のSullyは、トム・ハンクス演じるサレンバーガー機長の愛称です。

2009年1月15日、ニューヨークからシアトルに向かったUSエアウェイズ1549便のエンジンに渡り鳥が飛び込み、両方のエンジンが停止という非常事態が発生。空港に引き返すことは不可能と判断したサリー機長は、ハドソン川に不時着水という選択をする。その結果、乗客155名と乗務員全員が救助され、サリーと副操縦士のジェフ(アーロン・エッカート)は一躍時の人に。
しかし映画の冒頭は飛行機がN.Y.の高層ビルに墜落するサリーの悪夢から始まります(ここのCGがちょっとチャちく見えましたが、まあ夢だからそれでよいのかも)。目覚めてからもサリーの顔色はすぐれず、それというのも英雄になったはずの彼とジェフには事故調査委員会による審問が待ち受けていたのだ。管制官の指示通り空港に引き返していたら、結果的には全員無事だったとはいえ、ハドソン川への不時着で乗客の生命を危険に晒すこともなかったのではないか、と。
この調査委に直面するサリーの苦悩と、事故になったフライト時の回想が入り交じる複層的な時間構成で映画は展開します。非常に真摯で真面目なテーマと、手に汗握る娯楽映画の醍醐味の両立、いつもながらイーストウッド監督の手腕は絶妙です。
そして緻密なリアリズム描写と(フライト場面には敢えてそうしたのかCGの出来かは、どことなく白昼夢のような味わいもありますが)、全編を野太く貫くヒューマニズム…私はイーストウッドこそヒューマニスト黒澤明の後継者だと確信しました。

さらに粒ぞろいだったのは、俳優達の演技。髪を総白髪にしてサリー機長を演じたトム・ハンクスのシリアスに徹底した演技がまず素晴らしく、そして端役に至るまでのこれ以上望めないのではないかというくらい演技力のある俳優が揃いました。主要キャストだけでなく、CAたち、乗客たち、NYの市井の人びと、ほんの一場面しか出ない人物に至るまで、脚本の描き込みとそれに応えた俳優たちの演技により、誰もが忘れ難い印象を残しました。
特に私の印象に残ったのは、サリーらと交信した管制官役の人の演技。職業意識の高さとヒューマニズム溢れる白熱の演技でした。

事故とそれに続く審問会におけるサリー機長の戦いは、取りも直さず危機に直面した時に人はどのようにそれに立ち向かうかという問題でした。つまり危機管理に関する映画だと思うのですが、背景には9.11があることは間違いありません。ビルの窓から低空飛行する事故機を見たビジネスマンが蒼白になるショットを挿入することで、彼の脳裏に9.11の悪夢が蘇ったであろうことを言外に提示するなど、見事な表現手段です。
3.11が背後にある日本の危機管理映画が「シンゴジラ」なら、アメリカはやはり9.11なのでしょうね。

不時着の場面を見て、これ船舶を巻き込まずに不時着無理でしょう…と思いましたが、実際うまくいったんですよねえ。幸運もあったにしろ、サリー機長の冷静な判断力と技術の高さが窺われます。
さらに沿岸警備隊や消防隊の迅速な救助活動、一般のフェリーも多数救助に駆けつけ、機体の沈没前に全員救助という結果に繋がったこともきちんと描かれています。

事故調査委の審問会の結果についてはネタバレになるので触れませんが(ネットで検索すればすぐ分かっちゃいますが)、シュミレーション飛行のリピートやそれに反論するサリー機長の答弁を興味深く見ることが出来ました。裁判劇というか審問劇としても面白かった。

ぜひまた見たい映画です!



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ハドソン川の奇跡
Sully 2016年/アメリカ (監)クリント・イーストウッド (演)トム・ハンクス アーロン・エッカート ローラ・リニー ☆☆☆★★★ ...続きを見る
ごみつ通信
2017/03/08 01:19

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

拙ブログにコメントとTB有難うございました。

「ハドソン川の奇跡」は、静かな地味な作風でありながら、そこから醸し出される事故の緊張感が凄かったですよね。イーストウッドに技術もさることながら、彼のセンスの高さをしみじみと感じさせられました。

この事故、当時、テレビのドキュメンタリーを見たのですが、ホントに奇跡ですよね。事故のあとの調査委員会の事は知らなかったので、興味深かったし、後半の審問会は法廷劇としても見事でした。

夏さんの記事を読みながら、映画を見た時の感動がまざまざと甦ってきました。私ももう一度見たいです!
ごみつ
2017/03/08 01:41
ごみつさん、こんばんはー
TBありがとうございます。反映させたので、よろしくお願いします。

イーストウッドってアメリカ男のマチズムが根底にある人だと思いますが、でも「力」だけでなく知性や抑制もきちんと備えているんですよね。アメリカ的ではあるけれど、日本人にすごく理解しやすい資質があって。アメリカでは当たらなかった「グラン・トリノ」や「ジャージー・ボーイズ」が日本では大きく受け入れられたのがその証しではないでしょうか。

サリー機長は空軍士官学校でしたっけ、首席卒業した人で、心理学も学んでいるんですね。この人が機長でなかったら…とつい想像してしまいます。副機長もキャビン・アテンダントも危機管理に対する訓練と心構えが出来ていて、理想的なスタッフ揃い!

本当にもう一度大きなスクリーンで見たいです!

2017/03/09 23:27

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