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zoom RSS 映画「トランボ」

<<   作成日時 : 2016/07/21 22:00   >>

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『トランボ』 "Trumbo"(ジェイ・ローチ監督2015年)

明日(7/22)公開の映画『トランボ』を先々週の試写会で見ました。遅くなってしまいましたが、タイミングよいので、感想アップします。た『トランボ』の試写会も、ご相伴にあずかってのものです。あらためて、いつもいつもご一緒させて頂きありがとうございます。

「トランボ』は、5月に見たコーエン兄弟の『ヘイル、シーザー!』と対になっているかのように、ハリウッド1950年代の赤狩りが題材です。タイトル・ロールは、『ローマの休日』などの脚本、晩年の監督作品『ジョニーは戦場に行った』で名高い、脚本家のダルトン・トランボのことで、実話をもとにした物語となっています。
アメリカ共産党員のトランボ(は、数々のヒット作品を連発させる傍ら、脚本家仲間のアーレン(ルイス・C.K)、スター俳優のエドワード・G・ロビンソン(マイケル・スタールバーグ)らと、スタジオの裏方スタッフの待遇改善など組合運動にも力を入れていた。そんな中、第二次大戦後の冷戦が始まった1940年代後半、ハリウッドでも赤狩り(レッド・パージ)の思想弾圧が開始する。当時の実写フィルムが随時、挟み込まれますが、私が知ってる顔は、後の大統領ふたりロナルド・レーガンとリチャード・ニクソン。ハリウッドでレーガンと並んで赤狩りの先頭に立ったジョン・ウエインは、俳優が演じていましたが、身体ばかりでかいプロレスラーみたいでした。映画の中でしか見たことないけれど、本物のジョン・ウエイン、体格良くて無骨でも、男の可愛げみたいのがあったと思うのですが…この映画の中では悪役だし、仕方がないけれど。
干されて映画に出られなくなった結果、転向してトランボら友人たちの名前を売ってしまったエディことエドワード・G・ロビンソンって調べたら、ギャング役等で名高く、私はハンフリー・ボガート主演の『キー・ラーゴ』で見ている俳優でした。あれはすごい悪役で、見ていてガチで憎々しくなったくらいの迫真の演技の人でしたね。本物は強面でしたが、『トランボ』で演じたマイケル・スタールバーグは、色悪が似合いそうなちょいイケメン。
このエディの絵画コレクションもそうですが、トランボも脚本料でけっこうな暮らしをしていて、まあ珍しい話じゃないけれど、社会主義、共産主義者でブルジョワ暮らしって見かけますね。『ヘイル、シーザー!』でジョージ・クルーニー扮するスター俳優を誘拐した脚本家たち(彼らのモデルが「ハリウッド・テン」だということは後で知りました)の海辺のコテージ見た時も、「革命だソ連だって言ってるくせに、いい暮らししてそう」と思ったし。

だいぶ話がそれましたが、非米活動委員会の聴聞会に呼び出されたトランボは、「あなたは共産党員か?」という聴聞に、詭弁を弄してのらりくらりと証言を拒む。ここが面白くって、もっとこの聴聞会に時間を割いてほしかったくらい。
信奉するのが共産主義…しかもトランボたちが信奉していたソ連はその頃スターリンの血の独裁のまっただ中…という問題はほとんど突っ込まず、弾圧に負けず信念を貫く男、というこの映画の視点は、まあ逃げと言っちゃ逃げですが正解だったと思います。娯楽映画として、思想面には踏み込まないのは賢い処理だったでしょう。
結局、「ハリウッド・テン」はハリウッドを追われ、服役を終えたトランボは服役後、生活のため、B級映画の製作会社に脚本を売り込み、キワもの映画を量産、また偽名を使ってハリウッド作品の脚本もひそかに書き始める。
世間に隠れて超人的な仕事量をこなすトランボを支える妻クレオ(今なお美しいダイアン・レイン)と長女(エル・ファニング)ら子どもたちとの家族愛もしっかりと描かれます。
痛快だったのは、トランボを雇っていることがバレて、非米活動委員が「トランボを使うのをやめないと、俳優を引き上げさせる」と通告にきたら、「うるせえっ。俳優使えねえなら、素人使うまでだ!」とバット振り回して追っ払っちゃうB級製作会社社長キング(ジョン・グッドマン)でした。この映画人根性、胸がすきましたね!
そのキング・ブラザースに「今度は家族向けの作品」だと渡した脚本が『黒い牡牛』で、この映画と、そしてその前にかの『ローマの休日』と、トランボは他人名義で次々とアカデミー賞脚本賞を受賞する。この映画は信念の映画であると同時に、監視の目をかいくぐって仕事を掴んで生き抜くサバイバーの物語でもあるのが、面白いところ。

父のあまりのワーカホリックぶりに、娘が反抗するなど、家族の危機も織り込みながら、物語はトランボのハリウッドでの復権に向けて盛り上がっていきます。カーク・ダグラスが自ら主演する『スパルタカス』の、オットー・プレミンジャー監督が『栄光への脱出』の脚本をトランボに依頼、特にダグラスはハリウッド内部の妨害にも負けずに、堂々と「ダリトン・トランボ」の名前を脚本にクレジットします。
…カーク・ダグラス役は、マイケル・ダグラスだったりして…とチラっと思ったのですが、もちろんそんなことはありませんでした(今のマイケルは、『スパルタカス』の父親の年齢よりずっと上よね)。出てきたカーク・ダグラスは、むしろティム・ロスに似てました…まあね、そっくりでなくてもいいんだけど、演じたディーン・オゴーマンはやさ男で、本物は小柄ながらもっとマッチョでワイルドでしたからね…
そういえば、カーク・ダグラスまだご健在?と検索してみたら、なんと現在99才!往年のハリウッド・スターの才長老でしょう。圧力に屈せずトランボの名前を堂々と掲げて、一番かっこよかったかも。

言及が後になってしまいましたが、ジョン・ウエイン以上にハリウッドの赤狩りのリーダー的存在の人物が実はいたのです。ヘレン・ミレン演ずるゴシップ・ライターのヘッダ・ホッパーで、『ヘイル、シーザー!」では、ティルダ・スウィントンが演じた双子のゴシップライターも、ずばり彼女がモデルなのだそうです。そういえば、どちらの映画でも、変な帽子被っていましたが、これが本物のホッパーのトレード・マークだったよう。
俳優たちどころか、映画会社の重役までもが、ホッパーが書くゴシップで、社会的に葬り去られるのを恐れて逆らえない。何しろ演じたのがヘレン・ミレンですから単なる悪役にとどまらない底深さがある役どころでした。ホッパーは若い頃、駆け出しの女優だったようで、その頃仕事をもらう為に、重役たちのいいなりになっていた屈辱から、ペンの暴力を振るって男社会への復讐をしているようにも見えました。重役に「あんたたちの本名をバラしましょうか?」と、東欧系そしておそらくユダヤ系の名字を挙げ(彼ら移民が草創期のハリウッドを造り上げたことが分かります)、ジョン・ウェインが「転向したからエディに仕事を上げよう」と言っているのに、「いや徹底的に干しましょう」というホッパー怖かった…。そんなガチガチの反共主義者のホッパーがついにトランボたちに敗れ去るのは、1960年代という時代の趨勢でもあったのでしょう。時の大統領ケネディが『スパルタカス』を見に行くのがテレビに映し出されるのが、その象徴のようでした。

こうして、ついにトランボは映画界に復権を果たしますが、、映画のエンドロールに本物のトランボのスピーチの映像が流れるのが素晴らしかった。既に試写会場では席を離れ始めている人もいたのですが、トランボのスピーチが流れ出すと、固唾を呑んで見守っていた人が多かったと思います。すごい説得力ある映像、スピーチでした。

というわけで、大いに見応えのある映画でしたが、前述したとおり、トランボたちが命を賭けて守り通した信念なんて、所詮は『社会主義」「共産党」ですからね。「ハリウッド・テン」は自国の国家権力とは果敢に戦ったけれども、共産主義やソ連に対してはいかに甘ちゃんだったかは、『ヘイル、シーザー!」で描かれています。もちろん私はトランボたちの信念や生き方を否定するつもりはありませんが、要は『ヘイル、シーザー!』と『トランボ』両方見れば、バランス取れるのではないか、ということ。





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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは!

私も先日「トランボ」見てきました!
面白かったですよね〜。
夏さん、Oさんと一緒に「ヘイル・シーザー」を見ておいて良かったです。ホント、この2つを見てバランスがとれる感じがしますよね。
それにしても当時の赤狩りの実態は凄いものがあったんだな・・と刑務所のシーン見たりすると、辛いものがありました。

ジョン・グッドマンのシーンは本当に胸がすきましたね。「何を書かれようが、うちの映画見に来てる奴らは字なんか読めね〜んだよ!」とか。(笑)

「黒い牝牛」は未見なので是非見てみたくなりました。
あと、あのハリウッド10の作家たちが脚本を書いた、キングブラザースのC級映画みたいなのも見てみたいな。(笑)

今日は「シン・ゴジラ」に行ってきました。なかなか良かったです。音楽は伊福部ワールドになってましたよ。
ごみつ
2016/08/03 20:58
ごみつさん、こんんばんは!
ご覧に成られましたか!真面目で適度に重厚で、それでいて娯楽作品としてもよく出来ている作品でしたね。本物のトランボのスピーチと友に映画が終わった時に、ああ映画を見たなあ!という感じの充実感がありました。
ハリウッド・テンは服役までさせられたんですね。ヘッダ・ホッパーはあの時代のヒステリックな空気の象徴みたいな存在だったのだと思います。最初の方で赤狩り反対の立場でラジオで訴えているグレゴリー・ペックの音声がちらっと流れていましたが、あれが「ローマの休日」に繋がっていたんですね。

「黒い牡牛」私は中学の映画鑑賞会で、たぶん学校側がフィルムをレンタルしてきたのでしょう。講堂で全校生徒で見ました。盛り上がりましたよ。拍手湧いたり。確かにメキシコ人?の子役や知らない俳優ばかりで、その点は予算かかってないわ(笑)でもクライマックスの闘牛場のシーンはかなり大がかりだった記憶が。たぶんこれが私が見た唯一のキング・ブラザース作品かも!

「シン・ゴジラ」評判良いみたいだから、私もぜひ劇場に行こうと思っています。伊福部さんちゃんと使ってくれてるんですね!あと先週BSで録画したのを再見したばかりの岡本喜八版「日本のいちばん長い日」リスペクトだというのにも興味あります。やっぱりIMAXがいいのかしら?

2016/08/06 00:35

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