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zoom RSS コーエン兄弟 「ヘイル、シーザー!」

<<   作成日時 : 2016/05/23 00:37   >>

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『ヘイル、シーザー!』 "HAIL, CAESAR!"(ジョエル&イーサン・コーエン)
(上記公式サイトにアクセスすると、トレイラーの音声が流れます。)

奇しくも前の頁に続いて、兄弟監督の最新作を見ました。
コーエン兄弟の新作は、1950年代、黄金期のハリウッドのスタジオを舞台にしています。『ヘイル、シーザー!』とは、そのスタジオで撮影中のスペクタクル史劇の題名です。『ベン・ハー』が元ネタらしき『ヘイル』の他、西部劇、舞台劇、ミュージカル(こっちは『踊る大紐育』や『錨を上げて』がモデルだな)、水中レビュー等々、昔のアメリカ映画のファンにはうれしくなる劇中劇ならぬ映画中映画が盛りだくさんで、コーエン兄弟はこういうの撮ってみたかったんですねえ。若い世代や特に濃い映画ファンでない人には、こういう仕掛けはイマイチかもしれないけど。

物語は、実はほぼ一日の出来事。撮影所であらゆるトラブルを片付ける「なんでも屋」マニックス(ジョシュ・ブローリン)の早朝から始まる激務が物語の縦糸になっています。マニックスにもモデルがいそうですが、ロッキード社からヘッド・ハンティングの話がきているくらい仕事の出来る、いずれは名プロデューサーに出世してそう。大衆の夢を紡ぎ出す映画産業の裏側に、こういう実務一転張りのビジネスマン(「モーレツ・サラリーマン」という死語を思い出しました)がいるというのもがミソですが、しかしマニックスは芯は道徳的な人物で、ちらっと出てくる奥さんもとても善良…ああ、この立ち位置、コーエン兄弟の『ファーゴ』の女警察署長だな、と思いました。

未婚で妊娠してしまったスター女優(スカーレット・ヨハンセン)のお腹の子どもの養子手配や、舞台劇の映画化作品に出演するはめになった西部劇俳優(オールデン・エアエンライク)の大根演技に手を焼く監督(レイフ・ファインズ)をなだめたり、ゴシップ記者(ティルダ・スウィントン)を追っ払ったりと、マニックスがさばかなればならないトラブルは多種多様ですが、一番の核になるのは、『ヘイル、シーザー』に主演する大スターウィットロックの誘拐事件です。ウィットロックを演じたのは、ジョージ・クルーニーで、男盛りの古代ローマの将軍姿は似合っていてかっこよかった…けど、スターの顔の裏で実はへたれな男を楽しそうに演じていました。
このウィットロックを誰が何のために誘拐したかは、ストーリーのかなり早い段階で明かされるので、ここで伏せる必要はないかもしれませんが、これから見る方のために書かないでおきますね…1950年代というのが、ハリウッド全盛期であると同時に、赤狩りの時代だったというのがミソ。

コメディ映画として秀逸なシーンは、舞台劇の映画化作品に出演するはめになった若手西部劇スターボビーの演技指導場面です。今までの出演作では、「ホワイティ」(馬の名前)ぐらいしか台詞のなかったボビー君が気取った台詞回しで演技しなければならなくなり、どうしてもなまってしまう(日本語字幕は「なぜだがに」となぜだがに名古屋弁?)。それを根気よく?演技指導するレイフ・ファインズの監督とのやり取りが、もうほんとおかしかった。
ところが、このおバカそのものと思われたボビー君が、ウィットロックの誘拐についてなかなか鋭い推理働かせたり、物語後半で「あるもの」を偶然見つけた時に、実に的確かつ勇敢な行動を取るのです。そもそも警察にも届けず極秘にウィットロックを取り戻そうとしていたマニックスが、なぜだがにボビーを目の前にしたら誘拐のことを打ち明けたというのが、この子の非凡さの表れでは。
ボビー役のオールデン・エアエンライク(舌かみそう)は、「スター・ウォーズ」シリーズで若き日のハン・ソロ役に抜擢されてもいるらしくて、これからが楽しみな若手のようですね!慣れないタキシード姿で、おどおどとセットに入ってくるボビー可愛かった〜

もう一人の物語の鍵を握るのは、ミュージカル・スター、バートを演じたチャニング・テイタムはジーン・ケリーばりのエネルギッシュなダンスを披露します。この場面それにスカーレット・ヨハンセンの水中レビューの撮影場面でも、当時はオーケストラの生演奏で撮影・録音してたのだと分かり、アナログ時代のゴージャスさが偲ばれました。

という具合にてんこ盛りのストーリーの果てに、コーエン兄弟が提出したのは、「光が語る真実」という映画愛でした。散々苦労させられても、映画と撮影所で「腹の底から働く」映画人たちが大好きなマニックスは、コーエン兄弟の分身なのかもしれません。





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ヘイル、シーザー!
Hail, Caesar! 2016年/アメリカ (監)ジョエル・コーエン イーサン・コーエン (演)ジョシュ・ブローリン ジョージ・クルーニー オールデン・エアエンライク レイフ・ファインズ ジョナ・ヒル スカーレット・ヨハンソン フランシス・マクドーマンド ティルダ・スウィントン チャンニング・テイタム ☆☆☆★★★ ...続きを見る
ごみつ通信
2016/05/29 17:49
「ヘイル、シーザー!」
もう今週はバタバタでぐちゃぐちゃで疲れ果ててて、だからと言って来週の事も見えなくて、もうどーでもいーから週末位はノー残業(死語)で何もかも忘れてさくっと映画でも観てやる!明日の事は明日考えるんだもんね!などという気持ちになった金曜日の夜などにはちょうどいい作品。つまり、可もなく不可もなく、という娯楽作品である。しかし、しかーし!本当は深〜いのかもしれない。当時のアメリカでは(って正確にいつの時代設定だかは知らないけど)赤狩りの嵐が吹き荒れ、その影響がハリウッドにまで及んでいる頃だった筈だから。「... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2016/05/31 12:58
ヘイル、シーザー!
『ヘイル、シーザー!』を渋谷Humaxシネマで見ました。 ...続きを見る
映画的・絵画的・音楽的
2016/06/15 05:47
コーエン流 50&#39;sハリウッド
1日のことですが、映画「ヘイル、シーザー!」を鑑賞しました。 ...続きを見る
笑う社会人の生活
2016/06/30 07:52
Blu-ray:ヘイル・シーザー! Hail, Caesar! 今日「文化の日」にこの一本を鑑賞、は...
ジョエル & イーサン・コーエン兄弟 の新作。 いまいちの評判(...)に公開時を見逃し、機内映画でも ちらっと見ただけ。 やっと今日、Blu-ray で全体を通して鑑賞。 ...続きを見る
日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF ...
2016/11/03 23:22

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは!

先日は楽しい時間を有難うございました。
またゆっくり、映画やお食事をご一緒できると嬉しいです。

映画も面白かったですよね!
ハリウッド内幕ものみたいな内容なので、色々と知識があるほどネタがわかって楽しめそうです。

私、あの後、映画評論家の町山智浩さんの有料映画解説聞いたんですけど、幾つかネタがわかりました。有料解説だったのでブログ記事にすると営業妨害になりそうなので(笑)ここでちょっと。

レイフ・ファインズがやってた映画監督はジョージ・キューカーがモデルだそうです。
オールデン・エアエンライクはロイ・ロジャースなんですって。
スカーレット・ヨハンソンはエスター・ウィリアムスなんだけど、妊娠しちゃって子供を養子に云々は、クラーク・ゲーブル(既婚)とのあいだに子供をつくってしまったロレッタ・ヤングがモデルなんだそうです。

脚本家たちが謀反を起こすエピソードは、まんま今度公開の「ドルトン・トランボ」で描かれるみたいですよ!
ティルダ・スイントンの記者と、「トランボ」でヘレン・ミレンが演じる記者は同一人物だそうです。

何か楽しみになってきましたね〜。

私も近々には記事にしてみま〜す。
ごみつ
2016/05/26 15:50
ごみつさん、こんばんは。
こちらこそありがとうございました。良い映画と美味しい食事、そして楽しいおしゃべりの三点セット、近いうちにぜひまた!

「ヘイル、シーザー!」は往年のハリウッドの映画を見慣れていない人にはちょっと…という声もあるようです。お食事した時にもちょっと話しましたが、たぶん欧米のテレビって、日本よりずっと古い映画放送しているような気がするので、そのあたりにネタへの温度差あるかも。

町山さんの解説のご紹介ありがとうございます。有料のお裾分け、なんだか申し訳ないみたいです。でも面白い!
ジョージ・キューカー!ああなるほど。彼はゲイで、女優たちから信頼を受けていた監督だったんですよね。ラッシュ・フィルムでのボビー演技がそれなりになっていたのを見ても、確かに有能。
ロレッタ・ヤングを今検索してみました。クラーク・ゲーブルとの間に秘かに出産した婚外子を、一度孤児院に預けて、それから「養子」として引き取ったと…事実は小説よりも奇なりですね!倫理観の厳しい時代に、スターの座を保つためには仕方のない方法だったのかもしれません。

あの脚本家達の中には、つまりトランボも混じっていたわけですね。そういえば、ヘレン・ミレンもティルダ・スィントンと同じような変な帽子被ってましたよね<「トランボ」の予告編。マリア・カラスの伝記本読んだら、1950〜60年代にはオペラ界の周りにも、ゴシップ・ライターがうようよしていて、そういう時代だったんだな、と。今ではゴシップ・ライターはネットに移動しているのでしょうが、しかし往年の大物観はないかも(笑)

色々な側面から切り取れる映画でしたよね。ごみつさんのレビュー楽しみにしています。

2016/05/28 01:55
コンバンハ夏さん♪ この映画、名古屋で観られないか調べてみます。 あ ごみつさんのコメントもコッソリ拝見(-o-;) 二倍楽しませて頂きました!。 懐かしいスター達の名前を見ると今でもトキメキます!。夏さんもご存知?の通り昔の映画狂、矢舞でございます。ドルトン トランボもあの赤狩りで偽名を使っていた時期がありましたね…。 「黒い牡牛」が忘れられません!! 近頃我が家に古い映画のDVDが増えてきています… なんのことはない、娘がAmazonで見つけては注文してしまうのです(-o-;)ユ本人は興味無くて観ないくせに! それとオペラのDVD&CD。 これはフランコ酒井さんのせいです! 「失われた声を求めて」を読んでは○○の△△△が聴きたい、観たい、の私の声に反応してしまい、明日あたりペーター ホフマンの「ローエングリン」が届く予定♪ ついでにドロンとギャバンの「地下室のメロディー」も… 横道にそれたっぽいですね? 話を少し戻して「なにがだに」は名古屋弁じゃありゃせんぜえも(古っ!)(*´∀`)♪
矢舞
2016/05/28 02:14
追伸 訂正…「なぜだがに」でしたね(-o-;) ジョーン クロフォードの南部(テキサス?)訛りも凄かった!という話を思い出します。
矢舞
2016/05/28 02:22
矢舞さん、こんばんは!
ご指摘ありがとうございます…「なぜだがに」名古屋弁じゃなかったんんですね…知ったか書いてしまってすみません。えっとどこの訛
かご存じだったら、ご教示お願いします
「なぜだがに」のボビー君のエピソードは、「雨に唄えば」の訛のある女優のエピソードを思い出させてくれますが、顔はイイノに悪声…なんていうのは大昔のハリウッドからありがちな話ですね。

「黒い牡牛」その映画たぶん見たことあります!むか〜し学校の映画鑑賞会で見たのがそれだったと思います。ストーリー詳しく覚えてないのですが、クライマックス(何かが間に合った?)で拍手が湧き上がったくらい全校生徒盛り上がってた記憶があります。あれもトランボの脚本だったんですねー
トランボといえば「ローマの休日」ですが、「スパルタカス」もそうなんですね。「アカだからどうだっていうんだ」とトランボを起用したカーク・ダグラス男気あります。

フランコ酒井さんの新刊、心待ちにしています。今度は女性歌手…というようなお話も耳にしたのですが、早く出版されますように!
そういえば、本家のフランコ・コレッリさんですが、インタビュー聞くと、ボビー君じゃないけれど、あの容姿、歌声とイメージ合わないしゃべり方ですよねー。早口でちょっと舌足らずというか。こういうことが分かったのもYouTubeのおかげです。

2016/05/29 01:07
夏さん♪ 遅めのこんばんは〜 早めのおはよう〜 でございます(-o-;) …がに、とか…だに、とかはどこらあたりの(訛り)かは??? 三河地方かな???? ところで私はお国言葉と訛りは別々だと考えるのですが… 発音が違ったり、できないのが訛り。例えば茨木の知人、「えび」が「いび」東京の人(江戸っ子?)の「ひゃく」が「しゃく」東北の「じ」が「ず」 かと… 以前仙台に三年程居たのですが、有名な「ずんだ餅」売る場所によっては「じんだん餅」でした。 そういえば昔 若水ヤエ子というズーズー弁の女優が人気だったんですが〜 夏さん♪の生まれる前の丸いブラウン管テレビの時代です。 訛りといえばホラ、「マイフェアレディ」で知られたコクニー訛りがあるではありませんか!! スペインがスバイン、レインがライン、 ステイはスタイ、プレインはプライン等等… ヘプバーンの映画で知った時は、なるほど!と楽しかったのですが、いまだに馴染めないのが、ビハインドをバハインドというやつです。 *** 話変わって「黒い牡牛」〜生徒達の歓声は獰猛な闘牛に仕立てられ、傷ついた牛が闘牛場に飛び込んできた少年を思いだし穏やかに少年と共に闘牛場を去るシーンですね!きっと!!
矢舞
2016/06/02 04:26
矢舞さん、こんばんは。レス遅れてすみません。今日は仕事の帰りにウディアレンの新作の試写会に行ってきました。邦題はセンスないけど、中身は面白かったです!また感想書きますね。

「なぜだがに」三河弁でしたか。名古屋?とか知ったか書いて失礼しました!しかし、字幕訳した人はなんで三河弁に(笑)
若水ヤエ子…数十年ぶりに思い出しました〜私が子どもの頃にNHKで少年ドラマシリーズってあったんですが、それにこの方出てました!ドラマのタイトルまで記憶の底から浮上しました。確か「いろはにほへと」明治維新の頃のお話でした。
我が家は元々東京の下町に住んでたので、父までは「し」と「ひ」がしっくり返ってましたねえ。
コックニー訛りといえば、ロセッティのモデルとして有名で、ウイリアムモリス夫人となったジェーンモリスは人前では喋らないようにしていたとか読んだことあります。絶世の美女なのに、口を開くとコックニー訛りだったからとか…

「黒い牡牛」そうです闘牛場です!少年が間一髪間に合ってました。あんなに生徒が盛り上がったなら、学校としては作品のチョイス大成功でしたね!

2016/06/03 23:55

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