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help リーダーに追加 RSS イタリア映画祭2009 「ソネタウラ−"樹の音"の物語」

<<   作成日時 : 2009/05/05 22:58   >>

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イタリア映画祭 2009 Festival del Cinema Italiano 2009 Tokyo(4月29日〜5月5日 有楽町朝日ホール)


『ソネタウラ−"樹の音"の物語』 "Sonetàula"(サルヴァトーレ・メレウ監督 2008年)


サルデーニャ出身のサルヴァトーレ・メレウ監督の作品は、「イタリア映画祭2005」で『スリー・ステップ・ダンス』が上映されています。その時の私の感想は、コチラ
『スリー・ステップ・ダンス』に関しては、

>今回の映画祭の収穫といえる若い映像作家の登場だ。
>イタリア映画の過去の巨匠達のリアリズムと詩情という伝統を踏まえ、しかも故郷サルデーニャに根ざした処女作を発表したメレウ監督に、これから大きく期待できるのではないだろうか。

と書いたくらいなので、私は今回の『ソネタウラ−"樹の音"の物語』にも大きく期待していました。

…見終わってから、知り合いの方がロビーにいたので、そこで一致した感想。
「長い、重い、暗い」
1938年、サルデーニャ島。父親が無実の罪で流刑になり、13才の少年ズエンネ(あだ名が"ソネタウラ−樹の音")は山に入り、祖父、叔父と共に羊飼いとなる、という設定はそれだけでタヴィアーニ兄弟の『父 パードレ・パドローネ』を思い起こしますが、決定的な違いは、『ソネタウラ』は徹底的にリアリズムで押し通していること。教育も受けず、幼い身で厳しい自然と対話する羊飼いの少年の物語『パードレ・パドローネ』を初めて見た時は、私にとって大きなカルチャー・ショックでしたが、しかしあの映画には fantagia 幻想 と poesia 詩 がありました。メレウ監督の前作『スリー・ステップ・ダンス』も、リアリズムと fantagia 幻想 と poesia 詩 が同居した作風で、いかにもタヴィアーニ兄弟の後継者だと思われましたが、今回の作品には「幻想」も「詩」もありません。
2001〜2002年フィルムセンターでの『イタリア映画大回顧』でヴィットリオ・デ・セータ(デ・シーカの誤植ではないよ)の作品で、『オルゴソロの盗賊』というサルデーニャ島の羊飼いが無実の罪で追われて盗賊になってしまうという超リアリアズムの作品(おそらく素人に演技させていた)を見ましたが、『ソネタウラ』はそちらに非常に近い。ストーリーも作風も。
ズエンネは、18才の時に敵対する家と家の争いに巻き込まれ(これもサルデーニャものの定番ですね)、山の中に逃げ込み、いつしか山賊の仲間になってしまい、初恋の少女のことも諦め…という物語が、乾いた厳しいタッチで、言うなれば「直球勝負」で描かれます。力作だと言うことはよーく分かったのですが、「詩」がないと私には辛いものがありました。
ストーリーも作風も、こんな前世紀(20世紀)風のイタリアン・リアリズムで押し通した作品の企画が、よく今時通ったなあ、とこれは余計なお世話かな。

私が一番、興味深く見たところは、「山賊」という20世紀ですら時代錯誤としか思えない境遇になったズエンネたちが襲うのが、その頃普及し始めたバスだという奇妙な光景。私は、実際にサルデーニャ島に住んだことのある日本人の方に「今でも山賊がいるって本当ですか?」と冗談で聞いたことがあるのですが、その方はさらっと「いますよ」と答えられてました。それくらいだから、この映画の時代の第二次大戦終戦直後なんて、山賊なんて珍しくもなかったのでしょうね。その一方で、初恋の女性は、町に電気が通った記念祝典に、ズエンネの友人でもあった男性とともに出掛けてはしゃいでいて、彼女がもはやズエンネには手の届かない存在になってしまったことが明示されます。

「ズエンネ」という名前は、おそらくイタリア標準語の「ジョヴァンニ」なのでしょうが、この映画は台詞も90%はサルデーニャ方言で語られ、画面下には「イタリア語字幕」が付いていました。ここまで徹底するのも、「ネオリアリズモ」の時代まで遡ってるというか…。「普通の映画ファンにも見て貰いたいから」という理由で、敢えてサルデーニャ方言でなく標準語で『パードレ・パドローネ』を撮ったのが、ネオリアリズモの時代を経た1970年代のタヴィアーニ兄弟の趣旨だったのですから。

もちろん、こういう商業主義に背を向けた厳しい映画があってもよいと思っていますが、今後のメレウ監督には、『スリー・ステップ・ダンス』には満ちあふれていた叙情性をも活かした作品を撮ってほしい、というのが、私の正直な希望です。

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